バックステップ交換

ポジション変更がもたらす劇的な変化
マフラー交換がバイクの声を変えるカスタムだとすれば、バックステップへの交換はバイクとの対話を変えるカスタムである。
純正のステップ位置は、身長や体格の異なる万人が乗れるように、また街乗りからツーリングまで幅広く対応できるように、ある程度ゆとりのある位置に設定されていることが多い。
しかし、スポーツライディングを楽しもうとしたとき、この万人向けの設定が足かせとなることがある。
深いバンク角でコーナーを攻めようとするとすぐにステップが地面と接触してしまったり、前傾姿勢をとった際に膝の収まりが悪く、ニーグリップが甘くなったりするのだ。
そこで導入されるのがバックステップである。その名の通り、足を置く位置を後ろへ、そして上へと移動させるパーツだ。
ステップ位置が変わることで、ライダーの上半身は自然と前傾し、フロントタイヤに荷重をかけやすいフォームへと矯正される。
下半身のホールド感が増し、太ももとタンクの密着度が高まることで、バイクとの一体感が格段に向上する。
単なるドレスアップパーツと思われがちだが、その本質は、ライダーの体格や走りのスタイルに合わせてマシンを最適化する、機能的なチューニングパーツなのである。
剛性が生むダイレクトな操作感
シフトフィールの劇的な改善
バックステップのメリットは、ポジションの変化だけではない。多くの社外バックステップは、高強度のジュラルミン(アルミ合金)を削り出して作られている。
コスト重視の純正ステップに比べて圧倒的に剛性が高く、たわみが少ないため、ライダーの入力がダイレクトに車体へ伝わる。
特に違いを感じるのが、シフトチェンジの瞬間である。
純正のグニャッとした感触から、カチッという小気味よい金属的な操作感へと変化し、ギア抜けやシフトミスを減らすことに貢献する。
また、ステップバー自体のグリップ力も強化されているため、雨の日や激しい加減速時でも靴底が滑りにくく、踏ん張りが効くようになるのも大きな利点だ。
マルチポジションで最適解を探す
多くのバックステップキットには、マルチポジションと呼ばれる調整機能が備わっている。
30mmバック・20mmアップや40mmバック・30mmアップといった具合に、プレートの取り付け位置を変えることで、数段階の中から自分好みの位置を選択可能だ。
ミリ単位のわずかな違いだが、これによって疲労度やコーナリングのしやすさは大きく変わる。
自分の手足の長さに合った正解の位置を見つけ出すプロセスも、バックステップ交換の醍醐味といえるだろう。
交換時の落とし穴
バックステップへの交換は、見た目の美しさと性能向上を両立できる満足度の高いカスタムだが、取り付けにはいくつかの注意点がある。
最も忘れがちなのが、リアブレーキスイッチの処理だ。
純正ステップは機械式のバネでスイッチを引っ張っていることが多いが、バックステップに交換するとその機構が使えなくなる場合がある。
その際は、油圧式のブレーキスイッチを別途導入して配線加工を行わなければならない。
ブレーキランプが点灯しない状態では、当然ながら車検に通らず、公道走行も不可となるため注意が必要だ。
また、ステップは体重を支え、振動を受け続ける過酷なパーツだ。
取り付けボルトが緩むと脱落事故に直結するため、ネジロック剤の使用と、定期的な増し締めが不可欠である。
さらに、ポジションがきつくなるということは、長距離ツーリングでの疲労が増すというデメリットとも表裏一体である。
カッコよさや速さと引き換えに、ある程度の快適性を犠牲にする覚悟も、このカスタムには必要であることを覚えておこう。
