スズキGSX-R400

スズキ

軽さと高回転が魅力のスペック

GSX-R400は、1984年にスズキが送り出したレーサーレプリカの代表格。
その最大の特徴は、400ccクラスながら59馬力という高出力(※初期型)と、アルミ製フレームによる圧倒的な軽さ。この2つの要素が組み合わさることで、当時のライバル車を圧倒する性能を誇っていた。

エンジンは398ccの水冷直列4気筒DOHC。初期型(1984~1988年)は最高出力59PS/11,000rpm、最大トルクは約3.9kgf・m/9,000rpmを発揮していたが、1989年以降のモデル(GK73A型)では排出ガス規制などの影響で最高出力が53PSに抑えられている。
ブレーキはフロントにダブルディスク、リアはシングルディスクを採用。足回りについては、倒立フォークが採用されたのは1989年のGSX-R400R以降で、初期型は正立フォークとなっていた。

車体の取り回しも軽快で、後期モデルのホイールベースは約1,375mm、シート高は750mmと比較的コンパクト。日本のライダーでも無理なく扱えるバランスになっているのがポイントだ。

軽量アルミフレームと冷却方式がユニーク

GSX-R400の魅力は、スペックの高さだけじゃない。とくに注目したいのが、軽量な車体構成と独自の冷却システム。
当時の400ccクラスでは珍しいフルアルミフレームを採用しており、乾燥重量は153kg(初期型)。この軽さがコーナリング性能を高め、ワインディングやサーキットでも鋭い走りを実現していた。

もうひとつの注目点が、SATCS(Suzuki Advanced Three-way Cooling System)という冷却方式。これは、シリンダーヘッドを水冷、シリンダーブロックを空冷フィン、ピストン裏面をオイルで冷却するという部位別の三方式冷却システム。単に3つの手法を使うだけではなく、構造に合わせて冷やすという設計思想が込められている。

外観では、ブルー×ホワイトのツートンカラーと空力を意識したフルカウルが印象的で、当時のスズキのレーサー直系スタイルが色濃く反映されていた。

レプリカブームの中でも異彩を放った理由

GSX-R400が今も多くのファンに支持されているのは、性能だけでなく、レース機材に近い仕上がりや豊富なカスタムパーツの存在も大きい。
とくに1989年のモデルチェンジで登場したGSX-R400R(GK73A型)は、倒立フォークの導入やフレーム剛性の見直しなどが行われ、一段と完成度が増したことで注目を集めた。

現在でも中古市場で高い人気があり、状態の良い個体やカスタムベースとしての価値も高い。中でも「SP」や「SPⅡ」といった限定仕様は、クロスレシオミッションやレース装備が追加されていてプレミア価格が付いていることも少なくない。

軽量・高回転・シャープなハンドリング。この3拍子がそろったGSX-R400は、今見ても十分に魅力ある一台。眺めて楽しく、乗っても走りが冴える名車だった。