ヒルクライム族

ヒルクライム族

上り道を選ぶ理由

ヒルクライム族(オートバイ)は、峠道や山岳路の上りを主戦場にしている走り屋スタイルのひとつ。
平地や下りではなく「上り」を好むのは、走りにおけるパワーの使い方やバイクの挙動をコントロールする楽しさがあるからだ。
特に加速中の荷重移動やトラクションのかけ方を体感しやすい上りは、自分の腕とマシンの性能をストレートに試せる環境といえる。

使われているバイクは、軽量かつトルクのある中型〜大型のスポーツタイプが多い印象。峠によっては250ccや400ccのコンパクトな車種も活躍している。
いわゆる全開走行ではなく、あくまでライン取りやコーナーの脱出速度を意識したテクニカルな走りが求められるので、車両のスペックよりも乗り手のスキルがものを言う世界でもある。

バイクでのヒルクライムは、無理に飛ばすというより、どれだけ無駄を削ぎ落としたスムーズな走りができるか。
そのため、無茶な改造よりもノーマルに近い状態でメンテナンスに力を入れているライダーも多いようだ。

イベントで全開走行が可能に

「てっぺんヒルクライム」や「浅間ヒルクライム」といったイベントでは、公道を一時的に封鎖してヒルクライム競技が行われている。
それぞれ自治体や警察との協力のもと、安全を確保した合法イベントとして成立しており、参加者も多い。

形式は1台ずつのタイムアタック方式。スタート地点からゴールまでの所要時間を競うルールで、一般的なレースとは違い接触のリスクがない分、初参加でも挑戦しやすい構成になっている。
とはいえ、コースはタイトなカーブや勾配が連続する峠道。アクセルワークとブレーキング、車体の倒し込みがすべて試されるため、初級者が気軽に流せるものではない。

走行中はスタッフが要所に配置されており、クラッシュ対応や観客保護などもしっかりしている。観客エリアも設定されているため、走りを見る楽しさもある。
バイクのヒルクライムは自分だけのタイムとの勝負。無理に他人と争うわけではない分、マイペースで集中して走れるのも魅力のひとつだ。

公道走行と整備には要注意

ヒルクライムをやるうえで絶対に忘れてはいけないのが、「どこでやるか」。
当然、公道での走行は法律違反。たとえ人がいない場所だったとしても、第三者を巻き込む可能性がある以上、勝手なヒルクライムは避けるべき。

合法イベントに出る場合でも、バイクへの負担は大きい。上り坂でフルスロットルを使うことが多いため、エンジン回転数も高く、ブレーキやタイヤも消耗しやすい。
特にブレーキは、下りよりも軽視されがちだが、上りでもスピードが乗る場面は多く、しっかり利く状態にしておく必要がある。

さらに装備面でも、フルフェイスヘルメットやプロテクターの装着は必須。
イベントによってはレーシングスーツの着用が義務付けられている場合もあるので、走る前の確認は怠らないようにしたい。
バイクは転べば大ケガにつながるもの。だからこそ、「安全な場所で、万全な装備で走る」ことがヒルクライム族としての最低限のルールといえる。